その後の話

直近のクラブイベントについて調べると、きれいなビルのワンフロアを借りたもので、綺麗なダンサーがもりっと居る陽キャが集まるデカいイベントだとのこと。もはやピカピカな靴で対抗できるわけもなく、拳にメリケンサックの一つ二つが必要なのではと思いつつ近づいてくるイベント日。えいやと全てを見ないフリして行きました神田。神田だよ。


黒服の筋肉もりもり外国人が脇でじっとり見てくる中受付を済ませ、音楽が大音量でずこずこ流れては、わあわあ人が固まってお酒を飲みながらお話をしたりしている様子を端っこのソファーに腰掛けて眺める。眺める。眺める。


話をするも流れる曲の音量がデカく、大きな声を出さないと聞こえないメインフロアってあれでしょう、耳元に口を寄せて話しかけて良い雰囲気にならざるを得ないみたいなことでしょうと思いながらレッドブルウォッカを水のように飲む。飲む。飲む。人見知りが酒飲む場でやることはただ一つだけ。酒を飲み続けること。


人の視線がどのように動いてるのかを眺めているとまるで自分たちがスーパーの鮮魚コーナーに置かれた刺身のような気持ちになるもので、値を見たり値を付けたりを繰り返している人々の様子に切なさを覚えたり、買って貰ってたまるかみたいな謎のこじらせを育てるという虚しさが有りました。


こんな華やかな場で死んだ目をして酒を飲み続ける妙齢2人組に声をかけてくる大学生のハーフの女の子もおり、低いコミュニケーションを駆使してお話をするも、次第に気まずくなり、この場を離れたくなるという地獄。


どこに行っても人がいる限り地獄を作り続けるのは?と思いつつ、トイレに行ったりダンサーにチップを渡したりし目的はさておき自由に始発までの時間潰しをしたのでした。








いや終わってない。そもそもが友人も私も人見知りはする方なので入場する前に、最低3人には声をかけるという小さな目標を作っていたことを思い出し、いい具合に酔ってきたところで比較的音楽の音量が落ち着いている喫煙所に出向いて人に声をかけることにしました。


あちらこちらとうろついてる間にポケットからタバコの箱を落とし、それをスタッフに回収されてしまったようで、申し訳なくもそれを利用し、人に声をかけタバコを譲り受け、そこから話をしTwitterで繋がったりと無理くり目標を達成することに徹したのです。


ナンパ師が道を訪ねるのと同じ手段ですが、もはや出会いというものを捨て、本当にただただタバコが吸いたかったので、目に入った人一人一人に交渉したのでした。目的を見失いがち。


そんなこんなで泥酔をしたり不意に流れるハロプロ曲に飛び起きて走ったりを繰り返し、身も心もズタボロになったタイミングでイベントが終了。早く帰って寝る以外に何も考えられない中、喫煙所で少しお話をした女の子に声をかけられました。


「これから可愛い子とカラオケに行くんだけど、一緒にどう?」





意味がわからん。





帰りたいに決まってるだろ、何時だと思ってるんだ。五時だぞ、五時。朝の。新聞配達も終わってる時間だぞ。何を言っているんだ………?殺す気……?と言葉の意味を理解することを脳が避けている中で隣の友人が「うん、行く行く」と答え、今日イベントに参加した目的をとっさに思い出し、嫌だ………帰る……と思いながらも渋々「いく」と返事をし覚悟を決め直したのでした。目的を見失いがち。


カラオケに行きたいと言い出した可愛い子は芸能人か?と思うほどにべらぼうに可愛く、職業を尋ねると自宅で映像系のものをしているというぼんやりとしたことを言い出す人でした。YouTuberの匂いしかしないと思ったため、後日会うことになった友人にYouTuberか確認してもらうようにお願いしたら案の定YouTuberであるとのこと。YouTuberって実在すんだなあ。話が逸れました。


会場から出るさいにエレベーターで一緒になった人にもこの後カラオケ行きましょうよと勢いで誘い、オッケーをもらいと、見知らぬ人だけで構成されたグループで入るまねきねこ


アニソン縛りだの盛り上げなければいけない空気だのタンバリンだのマラカスだの謎のコールだの、子機を手にとり延長を常に申し出る奴だのがおり、トイレと言っては部屋から出ることを繰り返し脱走を謀りながらも地獄は4時間にも及び、解放されたのは朝の9時半。殺す気か。


体力の底がつき、へろへろとなっている中でまねきねこ楽しかったね、この後ご飯でも食べない?みたいな空気になり、早く帰って寝ないと死ぬ以外のことが考えられなくなった私は立ち去ろうとし、その様子に引いた若者は「ならばもう解散しましょう」となり、連絡先を交換してようやく私の中のクラブイベントは終了となったのでした。


目的を見失いがちか?


そんなこんなで帰りに乗る路線が一緒の友人とエレベーターの中で誘った子の1人と3人で電車に乗り、疲れたね……と話をしながら車窓をぼんやり眺めていたところ、その女の子がポツリと「もう✖︎✖️さん(この子とクラブイベントで一緒にいた子、カラオケにも参加)とは会わないだろなぁ……」と呟くもので、私と友人は意地悪に、おっ???何が有った???詳しく聞かせて????と面白がったり、その様子に焦って、✖️✖️さんは広島の人だからってだけです!???と弁解をしてる様子がまた面白く感じ、最後に良いもんを見たなと思いながらもお別れをしたのでした。


長い